大阪府門真市の磯和歯科医院 一般歯科・小児歯科・矯正歯科・訪問診療・歯周病治療・予防歯科等



当医院は歯科医師臨床研修施設として、臨床研修医の受け入れをしています。

大阪大学歯学部大阪府同窓会広報誌 杏葉61号 巻頭言

歯科医師臨床研修必修化 2年目を迎えて

専務理事 磯和 均(36回生)

 昨年度から必修化された歯科医師臨床研修制度は、今年で施行2年目になる。私の診療所も大阪大学歯学部附属病院の臨床研修協力型施設として、昨年度、今年度と研修医を受け入れてきた。この稿では臨床研修制度の概要と今後の歯科医師養成について研修医受け入れ先の立場から述べてみたい。

 必修化後の制度の下では歯科医師国家試験合格者は最低1年間の臨床研修を経なければ病院や診療所の開設者や管理者になれないことになった。つまり、よほどの事情がない限り、国家試験合格者のほとんどは臨床研修をどこかの研修施設で受けることになる。臨床研修先の決定は受け入れ施設と研修希望者の間でのマッチングと呼ばれるシステムで行われる。マッチング制度に参加しようとする施設や研修希望者は7月末までに参加登録をした上、各施設での見学、採用試験を経て、10月中旬の締め切りまでに希望順位登録を登録する。これらほとんどの手続きは歯科医師臨床研修マッチング協議会のホームページ(http://www.drmp.jp/)で行われる。10月末にはマッチング結果が発表され、アンマッチだった研修希望者以外は研修先が決定する。マッチングシステムが一般の入学試験などと異なるのは、採用通知をもらってから研修先を選ぶことができない点にある。事前に申告した順位で高位の希望研修先に合格すると変更はできないことになっている。一方、少数ではあるがマッチングに参加していない研修施設も存在する。

 大阪大学歯学部附属病院の場合2つの臨床研修プログラムがあり、4ヶ月を大学病院、8ヶ月間を協力型臨床施設で研修を受けるAプログラム(定員20名)と1年間大学病院で研修を受けるBプログラム(定員50名)からなっている。前述の通り私の診療所は臨床研修Aプログラムの協力型研修施設となっている。一般開業医を中心とする協力型研修施設は43施設(平成19年度)あり、マッチングで阪大の臨床研修プログラムAに決定した20名の研修希望者はその中から学外での研修先を選択することになる。協力型研修機関となるための条件にはいくつかあるが、主なものとしては臨床研修指導医がいること、常時2人以上の歯科医師がいること等がある。

 初年度であった平成18年度の場合は、研修実施のための準備に時間的余裕がなく前例もなかったために研修医、施設とも(おそらく大学当局も)かなり混乱した。診療所の正式な協力型臨床研修施設の指定が18年1月になったり、研修希望者は個々に協力型施設と受け入れの交渉をする必要があったりした。実施しながら徐々に改善していく方針だとはいえ、制度発足1年目に当った学年の先生方は気の毒であった。必修でない歯科医師臨床研修制度そのものはあったので、モデル事業を事前に行ってもう少しスケジュールを固めておくことができなかったかと思う。

 実際に研修医を受け入れてみてのメリットとしては、フレッシュな研修医を診療室に迎えることで院内が活性化することが挙げられる。一生懸命に知識・技術を吸収しようとする研修医に刺激され、スタッフを含めてその模範になるように勉強しよう、丁寧な診療をしようという雰囲気が生まれた。また研修に来た先生のつながりで若手の先生との交流が広がったことは、今後の勤務医確保に有効かもしれない。しかし、金銭面でのメリットは少なくとも私の診療所においては、全くない。阪大の協力型研修施設の平均の賃金はだいたい月200,000円位、ほかにも研修のための設備や器具・材料を購入する必要があるのに対し、厚労省からの補助金は最大で月61,000円しかない。さらに研修医はほとんど口の中でタービンを回したことがないくらいなので、常に目を離せない、教育・指導のために相当時間をとられることも事実である。また、受け入れ側としてはせっかく研修医を受け入れるための準備を整えても研修希望者がなかったり、希望者が決まっても国家試験で不合格になって結局研修医が来ないこともある。このように書いてしまうと研修医を受け入れないほうがよいように思われるかもしれないが、私としては若い卒直後の先生に何か少しでも伝えることができれば嬉しいと考えるので、今後も研修医を受け入れていくつもりである。

 先日発表された日本歯科医師会の会員動向では、この10年で入会者の平均年齢が約4歳も上昇したことが報告されていた。このことから歯科医師が一人前になるまでに以前より時間がかかるようになったと見るのはそれほど的外れではあるまい。実際、現在の卒直後の歯科医師の臨床能力は私の20年前の一診のときのそれよりもはるかに劣る。これは、個人の能力の差ではなく教育のシステムや社会環境の違いによるものであろう。学生実習で診療行為をすることがそれほど問題ななかった時代からすると一診が見学中心になっている現在、新卒者の臨床能力が以前ほどでないのは仕方ないが、少なくとも模型や抜去歯での実習は十分であることを期待するのは不自然であろうか。国家試験の時期が早くなり、合格率が下がったことで、卒前教育が座学にシフトしたのかもしれないが、卒後研修が必修化されたことでさらに卒前の臨床教育が後退したように感じる。ひとつのキャリアが一人前になるのにより多くの時間を要するようになることは地位向上につながるという意見もあるが、歯科医師過剰問題の解決策のひとつとしての歯科医師晩成(遅成?)化政策がとられているのかと疑いたくなるのは、私だけでもあるまい。少なくとも私の診療所では研修医が一日も早く基本的な診療能力を備えた歯科医師になれるように研修をしたいと考えている。やはり「鉄は熱いうちに打て」である。


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