大阪府門真市の磯和歯科医院 一般歯科・小児歯科・矯正歯科・訪問診療・歯周病治療・予防歯科等



当医院は歯科医師臨床研修施設として、臨床研修医の受け入れをしています。

QOLを"測る"

歯科医師 磯和 均

 近年、QOL(Quality of Life)は医療評価のための重要な視点として注目されている。歯科においても、話題に取り上げられることが多くなってきたが、QOLを測定してその内容を比較・検討することはあまり行われていないのが現状である。そこで、今回は、QOLを"測る"というテーマを通して、QOLの概念、測定の意義について述べてみたい。

1.QOLの概念
 QOLとは文字通り人間のlife(生命・生活・人生)の質のことであり、主観的・抽象的なものを含む多様な内容で構成されている。そのため論者によって考え方も異なることがある。一般的にはQOLの概念を構成する因子として個人の満足感や全体的な健康観といった主観的意識、身体的、精神的、社会的機能状態などが挙げられることが多い。このようにQOLは多因子的な概念であるため、"測る"といっても体重や血圧を測定するように単一の尺度のみで数値化されるものではない。

2.QOL評価の指標

QOL評価については測定の目的や標的集団の特性に応じて、さまざまな尺度が開発されてきた。それらは次の2種類に大別される。

 (1)一般的測定方法  

 QOLを普遍的に測定しようとするときに用いられる測定方法である。一般的なQOLを測定するため、より多くの分野への応用が可能である。しかし、全身の健康に関する質問項目がほとんどであるため、歯科の治療効果を測る尺度としては妥当性に欠ける場合もある。 一般的測定方法の例としては、わが国でも医科や看護の分野で比較的広く用いられているSF-36がある。SF-36では、36の質問からQOLを8つの領域で測定し、すべての人のQOLを包括的に評価する。このことからSF-36は異なる医療環境で比較したり、一般的な人々と慢性症状を持つ患者を比べるための共通の"ものさし"を提供している。

SF-36の 概要

 領域
 質問の例(質問により2〜5段階回答)
身体機能
・少し重いものを持ち上げたり、運んだりする
・百メートルくらい歩く
日常役割機能(身体)
・仕事や普段の活動をする時間を減らした
・仕事や普段の活動に内容によっては、できないのもがあった
身体の痛み
・過去1ヶ月間に、いつもの仕事(家事を含みます)が痛みのために、どのくらいさまたげられましたか 

全体的健康観
・私は他の人に比べて病気になりやすいと思う
・私の健康状態は非常によい

活力
・元気いっぱいでしたか
・楽しい気分でしたか
社会生活機能
・過去1ヶ月間に、家族・友人・近所の人・その他の仲間とふだんのつきあいが、 身体的あるいは心理的な理由で、 どのくらいさまたげられましたか
日常役割機能(精神)
・仕事やふだんの活動が思ったほど、できなかった
・仕事やふだんの活動がいつもほど集してできなかった
心の健康
・かなり神経質でしたか
・おちこんで憂鬱な気分でしたか

 (2)特異的測定方法

 ある特定の疾患や治療方法でのQOL測定の目的で開発されたものである。たとえば、慢性肺疾患患者のQOL評価とか関節炎患者のQOL評価といったものがあり、歯科に関連するQOL測定方法も多くはこれに含まれる。

 これまでに海外で開発された歯科関連QOL評価指標の中でも、妥当性と信頼性が高いとされているものには、OHIP, GOHAI, DIP, SOHSIなどがある。このうち翻訳版として確立しているものにはOHIP-49日本語版がある。また、わが国で作られた指標の中ではFSPD34型が多くの調査に用いられている。

OHIP-49 の 概要

 領域
 質問の例(すべて5段階で回答)
機能的質問
・かみにくい
・食べ物が歯にひっかかる
痛み
・歯がしみる
・歯ぐきが痛い
不安感
・悩んだことがある
・みじめな気分になったことがある
身体的困りごと
・食べられない食品がある
・笑うことをためらう  
心理的困りごと
・イライラする
・物事に集中できない
社会的困りごと
・外出をさける
・日常の家事・仕事に差し障る
ハンディキャップ
・健康が悪化した
・十分に仕事の能力を発揮できない

3.QOL測定の意義

 歯科分野においてQOLの重要性は認識されてはいるが、現在のところQOL測定の指標について十分評価されているとは言いがたい。単に、「歯科治療によってQOLが改善した」と述べるより、尺度を用いてQOLを"測る"ことにより

@治療によりどのような領域でどのくらい改善したかの効果を客観的に評価できる

A他の治療法との比較ができる

B一般的測定法を用いることで医科の治療とも効果の比較ができる

C医療の経済性評価や医療品質保証への応用が期待できるなどの意義がある。

  今後、歯科におけるQOLの議論を深めていくためにもさらに優れた指標の開発と、広い使用が望まれるところである。

参考文献
1)武藤正樹、今中雄一:QOL概念とその評価方法、老年精神医学雑誌 4(9):969-976、1993
2)萬代隆、日野原重明:Quality of Life 医療新次元の創造、 メディカルレビュー社、1996
3)福原俊一、鈴鴨よしみ:SF-36日本語版マニュアル(ver.1.2)、(財)パブリックヘルスリサーチセンター、2001
4)井出玲子、筒井昭仁 他:口腔に関わるQOL評価の試み−Oral Health Impact Profile-49日本語版の信頼性の検討−、口腔衛生会誌 52:36-42、2002

大阪府歯科医師会雑誌掲載


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